ばかげた情熱

ニーネのCDを買った。
偶然みつけた、とてもすてきなうた。
ジャケはぼやけた感じの、海で撮った写真だった。
『海かぁ・・・、久しく行ってないな。』
波の音。
いくつも重なった足跡。
砂のお城。
貝のかけら。
浜辺にかいた、友達とわたしの名前。
カメラのシャッター音。
笑い声。
“こんなふうに、いつまでも。この気持ち、
忘れたくないね”って、そう誓った。
あれからどれだけの時が流れて、どれほどのことを
忘れてしまったのだろう。
なにをどうやって残せばいいのかわからなくって。
なにを置いて、なにを拾ったのかさえわからなくって。
たまらなく不安になる。
そう。ニーネはね、言ったよ。
♪〜1秒まえに戻りたい．1秒もどるために10秒
かかったっていい．〜♪

CDには、たぶん、男のコがネコを持ち上げた絵。
顔の輪郭も、目も、口もない。
細いブルーの、線だけで描かれた絵。
笑っているのかも泣いてるのかもわからない。
そんなだから、わたしも・・・
笑っていいのか、泣いていいのかわからない。

ばかげた情熱。
それだけ。
だけど、それだけが・・・。